会長の挨拶

会長の挨拶

長時間透析研究会は,2005年に開業医の有志4施設によりスタートしました。最初は小さな消えてしまいそうな研究会でしたが、 地道に継続してきたことにより、その認知度は少しずつ上がっていると感じています。

 長時間透析は国内の大多数の施設で行われている4時間透析に比べて、生命予後やQOLにおいて優れているというだけでなく、 降圧薬や貧血治療薬など薬剤の使用量が少なくてすむことから、医療費低減という側面からも注目されるようになりました。 毎年開催される学術研究会には、発足時には考えられなかったほどに多数の参加者が集い、活発な討論が行われていることは望外の喜びです。

 日本透析医学会のガイドライン(維持血液透析ガイドライン:血液透析処方2013年)には『現状の血液透析治療は間歇的治療であり、 多くの症例は週あたり12時間しか治療されていないため腎機能の代行は不完全である。この標準血液透析は生命を維持する最低限の治療であり、 そのため透析関連合併症が発生し生命予後が不十分となる。これを解決する最もよい方法は、週あたりの透析時間の増加であり長時間血液透析や頻回血液透析が有用である。』 との解説がなされています。

 長時間透析は「週3回であれば1回6時間以上」と定義されますが、6時間は決して長時間というほどのものではなく、短時間に比べて「長時間」ということに過ぎません。 透析療法黎明期のキール型人工腎臓の時代は、透析効率が低いこともありましたが1回8時間から12時間というのが当たり前でした。したがって、 長時間と呼ばれる6時間透析を実践することは、決して難しいものではなさそうに思えます。ほんの少し、今までよりも時間を延長するだけのことです。 しかしながら現実には、国内で長時間透析を受けているのは2,000人程度に過ぎません(わが国の慢性透析療法の現況2015年末)。

 では、透析時間の延長を阻むものは何でしょうか?
 実は、「長時間透析」というものが、まだ十分には知られていないというのが大きな要因のように思われます。
日々の透析治療に従事する医療者にとって、未知のものを取り入れるのはある種の冒険に他なりません。 『長時間が良いという話は聞いたことはあるが、経験がないので具体的なことは判らない。』というのが大多数です。
 また、『4時間でもきついのに、6時間なんてとんでもない!』、という声も聞こえます。 『高齢者でも大丈夫なのか?』、との質問もよく受けます。ほとんどが,知らない、経験がないということによるものと思われます。

 長時間透析研究会が果たすべき役割のひとつは透析時間の延長によってもたらされる効果や長所・欠点について、正しい情報を正しく、 広く伝えることにあると考えます。そして、「正しく知る」ことが、時間延長への一歩を踏み出す切っ掛けになることを期待したいと思います。
 透析時間の重要性に多くの方々が関心を寄せ、互いの知識・技術を深めていくことが、今後のより良い透析医療の実現につながるものと信じています。

 2018年1月に,発足時より会長を務められてこられた金田浩先生から同職を受け継がせて戴きました。本研究会のさらなる充実発展のために、皆さまのご協力とご支援をあらためてお願い申し上げます。


                                              長時間透析研究会 会長 前田利朗